魔法のように消える

去年の冬くらいだろうか、朝の通勤時に妹にソックリな人が妹と同じ車種同じ色の車に乗っていた。あまりに似ているのですぐに覚えてしまい、それで意識しているとほとんど毎日会うのだ。彼女は歳の頃も妹と同じくらいだろうか。サングラスで目元はよく見えないが、妹に良く似ている。あまり似ているものだから、妹かと思ったが妹が通勤する道ではないので、本当にただ妹によく似ている女の人が妹同じ車種、同じ色の車を乗っているだけらしい。

 

これはあまりにも面白いので今度妹に会った時に話してやろう。しかしよく怖い話で自分にソックリな人に会うとうんたらかんたら、っていう怖い話もあったような気がする。サマータイムレンダというアニメを見た事もあるが、あまり自分のソックリさんに会うのはよくない印象だよな。とりあえず毎日会う妹のソックリさんはサングラスの君、と呼ぶことにした。

 

サングラスの君の他にも、マツダ紺色8ナンバーの君、連番XVの君、軽トラブラシの翁、白ノア激遅走行の爺、ラブフォー信号横切り人、と名付けた毎朝わりと会う人達がいる。連番XVの君はおじさんが乗っていたがある時ぱったり合わなくなったので、多分退職したのであろう。おめでとう。脱社畜。いとうらやまし。

 

この前お盆に家に帰った時妹が、そういえばこの前の朝信号待ちしているお姉ちゃんとすれ違ったよ。お姉ちゃん気がついてなかったけど。とのたまう。え?あの道通って通勤してるの?!と聞くと、うん。半年くらい前に曲がる道通り過ぎて仕方なく今の道通ったら、その方が5分くらい早く会社に着いたからそれからずっとあの道通ってる、と言うではないか。

 

な!なんと!サングラスの君は妹であったか!おまいだったのかゴン状態だな。こりゃ。その話をしたら、いや、もっと早く気が付けよ、と妹にツッコマれた。それを言うなら最近まで全く私とすれ違ってる事すら気がついていなかった妹も同罪かと思うし、むしろ私はソックリさんだと勘違いしてはいたけどすれ違っている事に気が付いていた分マシかと思うが、妹が怖いので黙っておいた。

 

そんなこんなで、サングラスの君にはもう2度と会えなくなってしまった。正直スカした感じの人だな、キツめの印象の人だな、と思っていたが、あれが他人から見た妹の印象なんだな。妹と分かってしまったらもう妹にしか見えない。あ、でもキツめなのは正しいからある程度性格は外見に現れるのであろな。さようならサングラスの君。妹のソックリさんはお盆の時の妹の告白により、魔法のように消えてしまいましたわ。