仙人、教授、そして私

朝始業してすぐ隣の係長が、うわ!最悪!と呟く。私が、何がですか?と聞くと、副部長から来てるメール見てみて、というので見る。思わず目が飛び出てパソコンの画面にぶち当たりはねかえって戻ってきた。係長が私を気の毒そうにみている。

 

何か会社の取引先とのまあまあ大きな催し物の司会担当に私があたっているのだ。係長は受付担当。どう考えても役割が逆じゃないですかっっ!!いやいやいやいやいや!有り得んでしょ!毎年開催されてるけど、この会には係長級以上しか出席しない。私なんてそもそも参加しなくていいものと思っている上に一度も出た事ない会にいきなり司会ってどーゆこと??

 

副部長が、僕が決めたんじゃないから僕を恨まないでね(てへり風に)的なことを宣う。ぶっ、部長かあ〜!!空気読めない上に突拍子も無いこと考えるんだよな!!どう考えても他に適任の係長や課長達がわんさかいるのに、何故に舌足らず、あがり症、人前で話すなんて死、みたいな平社員同然の私のような人間にこのような役割を振るんだ?!もしかして新手のいじめか?

 

ストレス値の閾値を軽く超えたので、瞬時に脳内がストレスから身を守るモードに変換になって、逆に何も感じなくなった。あー、はいはい。やればいいんでしょ。社長や取締役というても、所詮猿の群れ。猿の前でキーキー司会すればええんでしょうよ。キーキー。いや、もうこれ以上この事は当日が済んだその日の夜まで考えずに無いものとして過ごそう。心の平穏の為に。

 

今日は裏山に散歩に行ったら仙人イトウに出会い少しだけ話をする。仙人イトウが最近益々元気に山の整備に勤しむものだから、木が切られすぎている感がある。鬱蒼としていた林が大分明るくなっている。仙人イトウ、今日もいつも通り鼻水を盛大に垂らしているが、その鼻水の大河がアマゾン川もかくやというような流れを作って顎の下10cm近くまで垂れ下がっている。見事だなあ。

 

その後池の近くで今度は、教授に会う。この人は教授のような知的な雰囲気をまとっているので、あだ名が教授だ。教授、池でザリガニを釣っている。会釈すると向こうも私の顔は覚えているのでニッコリ笑って会釈を返してくれる。

 

教授も仙人イトウも紛うことなく、彼らの同世代とは少し異なった雰囲気、ズバッと言っちゃうと変わり者の雰囲気を醸し出している。80近い仙人イトウも、70くらいであろう教授も、楽しそうに山で遊んでいるからだ。そういう私も紛うことなき同年代の女人と比べたら変わっていると言っても良いだろう。楽しく山で1人で遊んでいるから。

 

この前も妹に言われた。おねーちゃんさ、興味のあるものがあると、あたり構わず立ち止まってジーーーーと観察するけどね、あの行動、子供だから。いいデカイなりのおばさんが子供の行動してると、頭がおかしい変わり者の目で見られるからね、と言われた。

 

観察といえばこの前オニヤンマみたいなトンボがいて、でも目の色が違うなあ、と思ってそろ〜っと近付いて観察していたら、逃げないのでどんどん近付いて、最終的に近付き過ぎてマジでトンボと目が合った。あ、今目が合ってるわ、と思ってそーっと指を伸ばして左羽の端をチョンチョン、と触ったら、お、ちょ、やめろよ、てな感じで体を少し斜めにしたくらいで、逃げずにまたこちらを見てくる。それでまた指で今度は前足を触ろうとしたら、おい!お触り禁止だぜ!!って感じでふわっと飛んでそれでも遠くに行かずに、1mくらい離れたところへ着地しこちらをジーっとみている。へえ。虫も観察するんだなあ。私が向こうを観察してるつもりでも、向こうからしたら私を観察しているのって何かおもしろい。

 

それかもしかしてあれはドローンだったのかもな。山で遊んでる変わり者トリオ、仙人、教授、私、の生態を観察している誰かのトンボ型ドローン。それにしても仙人イトウや教授は私にどんなあだ名を付けているだろうか。きっと付けてくれているはずだ。そのもの身長がでかいから大女かな。それともいつも役にたたなさそうな木の棒もってるし、デクノボウ、またはうどの大木って呼ばれてるかもな。それを予想するのもまた楽し。