パブロフの犬

大体毎朝健康チェックの為に自分の体から出た、廃棄物のチェックをしている。チラッと見るだけだが。しかしその日はギョッとするほど大きかった。それで感嘆し思わずしげしげと眺めてしまった。廃棄物の王様はどっしりと腰を据えてそこに鎮座しておられる。思わず拝みたくなったが、しばらく眺めた後に海へ還す事にした。その時に自分の口から無意識に出た言葉に驚いた。

 

「可愛い」

 

え?可愛い?今私自分の廃棄物に対して可愛いって言った?自分の口から出たとはいえ、全く予想していない言葉に自分自身狼狽える。いや、結構女人は何でもかんでも可愛い〜〜って言う生き物であるが、それにしても自分の出したアレに対して可愛いなどと言うであろうか。何でもかんでも可愛い〜っていうそこら辺の女人に自分から出た廃棄物にもそれを言うのか聞いてみたい。大体可愛いと思うから可愛いと言うのであって、私は全然自分のアレに対して可愛いとは思っていなかったのに何故その言葉が自然に出たのだ?不思議でたまらない。

 

それで不思議すぎて????状態でトイレから出た瞬間に思い当たった。

 

鳥見のせいである。私はバードウオッチングしている時、それこそ長い間じっくりじっとりしつこく鳥を眺めている。鳥が何をしていても愛くるしく可愛いので、頭の中は可愛いでいっぱいだ。それでひとしきり観察が終わった後に双眼鏡を下ろすのだが、その時にしみじみと、可愛い~と呟いているのが常なのだ。

 

そんな生活がはや2年も続いているとなると脳も省エネモードになり、同じ行動を取ればその先の行動を選択することを省き、どーせこの行動でしょ、と自動モードに入るのだ。

 

この場合脳は、観察が始まった→最後に可愛いと言う、という行動までを自動モードにしているのだな。それで私がしげしげと自分の廃棄物を眺めていても、例えそれが鳥とは違った可愛いとは程遠い存在であっても、観察するという行為は同じであるので、最後に可愛い、で締めた訳だ。

 

うむ。素晴しい!脳っておもしろいな!パブロフの犬的なものだな。よかった。自分の脳がとうとうバグを起こしたかと一時不安になったがな。パブロフの犬的行動と分かったから安心した。

 

しかし1日中、トイレで流す前のアレに可愛い、と呟く自分の姿を思い出して笑いが込み上げ、1人で仕事中もニヤニヤしてたがな。