ベンツの持ち主

今日は舗装されていない林道をガタガタ走って目的の登山口に着いた。こんな山奥に登りに来る物好きはいないものと思っていたが、すでに数台停めてある。なんという物好きだろう。自分の事を棚にあげまくるが、いやいや私は県内だが、停まっている車全て県外である。いや、物好きだ。あと、あれだね、みなさんいい車乗ってんな。ベンツであの舗装されていない道をガッタガッタと走って来たのか。つわもの。まあ、登山自体お金がかかるからお金持ってる人がとっつきやすいのもあるし、お金持ってる人はいい車乗るだろうし、当然の帰結として今ここの登山口駐車場にいい車があると言う事だな。うむ。

 

頂上に付くと最高に美しい景色が待っていてくれた。雪を被った御嶽山乗鞍岳、その奥に北アルプスの山々。う、美しかっっっ。早速美しい景色を眺めながらカップラーメンをすする。すすると言ってもこの前の登山時に隣にいた人もカップラーメンで、その人と絶妙にカップラーメンをすするタイミングがシンクロしてしまい妙に恥ずかしかったので、本日はすすらずに、チマチマハムスターみたいに食べた。なんせまた隣の人もカップラーメンだったしな。

 

山頂には私を入れて7人しかいない。さてこの中にあのベンツの人がいるはずだ。隣のラーメンすすりおじさんは違うだろう。リュックにかなり年季が入っている。リュックにこれほど年季を入れさせる物持ちのいい人は私と一緒で貧乏性のはずだ。金のあるなしに関わらず貧乏性がベンツなんか買ったら勿体なくて舗装されていない林道なぞ走れぬ。

 

ではあの30半ばくらいの夫婦ぽい人達だろうか。可能性は十分にある。しかし30代の人達の好みとはちょっと違うような気もする。ではあっちにいる60代くらいの年配の夫婦みたいな人達だろうか。うむ。十分考えられる。この年代の人が乗ってそうな車だ。

 

しかし捨てがたいのは30代半ばから後半くらいの女の人だ。1番有り得なさそうだが、この人が乗ってたらおもろいな。父親から貰ったベンツであっちの山こっちの山と1人で走り回ってる彼女を頼もしく思う。という妄想。ああ、でも登っている時にすれ違った60代くらいのおじさま、あの人の車ってこともある。それは当たり前過ぎてつまらんな。

 

そんな事考えて登山口に戻って来たらすでにベンツは消えていた。うむ。私より早く下りて行ったのは、60代おじさん、30代夫婦、30代女人、よし。持ち主は30代女人、お父さんに貰ったお古のベンツで山を駆け回るあなたに決めました。おめでとうございます。

 

こういう妄想を延々としながら生産性なく歩き続け、時間を何時間も食いつぶすところが登山のいいところだ。