キツネのケビン

係長から、級が上がったから職位もその内多分上がるよ、と告げられた。うへへ、お金上がりますかねと聞いたら、お金も増えるけど仕事も増えるよ、と係長が言い終わらない内に被せ気味にそれは嫌だ、と言っておいた。  

 

嫌でも増えるけどね、と念を押されたので、笑って誤魔化しておいた。誤魔化せていなかったようで、早速今日から係長からボンボン仕事が飛んでくる。クッ。おいらは級が上がれば金が貰えると純粋に思い、金に目がくらんで今回受かっちまってもいいや、と思い多少なりとも勉強したのだ。と言っても試験はレポートが1番重要視されるので、これは私のようなウソハッタリをさもありなんと書ける人は優位であろう。これが数学の問題だったら私はどんな下位の級でも受からない自信がある。

 

しかし係長、早急すぎやしないか。級は上がったがまだ職位は上がってないのに、仕事増やすなんて鬼畜。私は定時で帰りたいんや。もう仕事増やさんといてくれ。わたしゃ毎日定時で帰らないと死んでしまう病にかかっている前提で必死になって仕事をしてるんや。余裕があるから定時で帰ってるんじゃないわい。

 

今日も前のデスクの人間は通常モードで取引先をネチネチ虐めている。マジで最近その会話を聞いていると流石の温厚な私でもブチ切れそうになる。いい加減にしなよ、ホンマ。責めたって何も改善して来なかったんだから、いい加減学んで手を替えろや。というかいくらその取引先がクソでも、会社の体質的にクソだから窓口営業担当をネチネチ虐めたって何も解決しない。ただのいじめによるストレス発散だ。最悪な人間になりつつあるな。以前はこんな酷くなかったのにな。人間て良くも悪くも変われるとは言うたもんだ。目の前でどんどん人格が悪くなっていく人間を見ていると、メンタルがこっちもやられる。

 

そんなこんなで今日は定時でぶっ飛んで帰って多少暗くなっていたが、裏山に散歩に出かけたら既にケモノ達の時間で、キツネとタヌキに出会った。キツネは何回かあった事があるので、そろそろ名前をつけたろ。君はケビンや。と逃げていくケビンの背中に話しかけていたらストレスも何かケビンと一緒にどっか行ってしまいましたわ。