おはぎと大判焼き

餡子が好きだ。それも圧倒的粒あん派。理由は子供の頃からおばあちゃんやお母さん、親戚のおばちゃんから、近所のおばちゃんまで、粒あんで作ったそれはそれは極上のおはぎや、地元のお饅頭になるが、うちではハゲ饅頭と呼んでいるお饅頭を沢山作って食べさせてもらったから。

 

粒あんは優しさに溢れている。幼い時からの刷り込みだ。作ってくれたおばちゃんやおばあちゃんみんな優しくて温かだった。でももうみんな彼岸の人となったので、今では夏の半夏生の時期に、母に頼み込んで作ってもらうハゲ饅頭だけが、唯一懐かしの粒あんの味。それも今年は母の調子が悪かったので、お口にする事が出来なかった。

 

こし餡は私の中で上品過ぎて、私の卑しいお口に合わないのだろう。美味しいとは思うが、粒あんを食べた時の細胞の元から湧き上がるような喜びとは別格のものなのだ。

 

でも、一つだけこし餡でも愛していたものがある。高校の帰り、電車とバスの乗り継ぎではかなり時間が空くこともあって、バス停の近くの大判焼きをよく買いに行った。そこの大判焼きは白あんで、その白あんの口当たりの良さと甘さが抜群で、お金に余裕があれば結構な頻度で買っていたのだ。ガラス越しにおじいさんが慣れた手つきで大判焼きの型の中に白あんをシャッシャツと、皮の中に落としていくのを見るのも好きで、店のおじいさんと何を会話するでもなくそれをじっと見ていた静かな雰囲気を今でも思い出す。あの大判焼きもおじいさんが亡くなったのであろう、いつの間にかお店がたたまれていた。

 

この前道の駅みたいな所で久しぶりに近所のおばちゃんが作ったであろうおはぎを見つけた。以前イオンかどこかで粒あんのおはぎを見つけて食べたが、こし餡になる1歩手前です、てなちょっとした上品さを感じたので心配したが、心配したとおり何か甘すぎてダメだった。今度は道の駅。見た目は期待高ぶる粒あんのゴテゴテした感じがでているが、あまり期待し過ぎずに食べた。おお!近い!幼き頃のおばちゃん達のあんこの味がする!懐かしさでちょいと涙がちょもれたわ。

 

ああ、それにしてももう一度おばちゃん達のおはぎ、おじいさんの白あんの大判焼きを食べてみたいものよ。