じい様につかまる

もうすぐお盆休みだ。お盆休みは初めて乗鞍岳に行ってみようかな、と思っていたのだ。手軽に登れる高山なので。しかし天気予報はあまりよくない。天気の良い日に行きたいのでスッパリと諦めた。

 

でもいつか高山登れる体力を付けるためクソ暑い夏の低山を汗だくで登るという行動をとっている。この前登ったらやはりクソ暑いので頂上には夏休みに孫を連れてきたっぽい家族と、じい様1人しかいなかった。じい様は、家族連れに盛んに話しかけている。やばい。私の人見知りセンサーがビンビンに反応している。

 

この家族連れが下山してしまったら、このじい様のお喋りの照準は迷うことなくこちらに向けられるだろう。そうこうしているうちに家族連れは下山してしまった。

 

やばいよ。やばいよ。私もお茶を飲み、景色の画像を取り下山しようと思った時にやはりじい様のお喋り散弾銃の餌食になってしまった。どうやら昔はあちこちの高山を登っていたらしく、キレットとか馬の背とか穂高の山小屋とか、横風が吹いて滑落しそうだったとか、目の前で人が滑落して7針縫う頭パッカン事件とか、話題が尽きる事がない。という事で30分も捕まってしまった。

 

おまけに別ルートで登ってきたのに、帰る時にこっちから一緒に下りて、車でそちらのルートの登り口まで車で送ってくれるという申し出も受けたが、そちらは丁寧にお断りしておいた。

 

じい様のお話は面白かった。面白かったが、私は人との触れ合いとか、旅先で親切にとか、温かい現地の人との交流とか、そういうものは一切要らない人間なのである。人と話すのは疲れる以外の何ものでもない。どんな優しい人だろうが人格者だろうが、人と話すのエネルギーがむちゃくちゃ持ってかれる。そのエネルギーの持ってかれようっていったら夏山登山の比ではない。

 

じい様のお話は面白かったが、やはり頂上で休憩する時には充分気をつけよう。話しかけられないように。

 

しかし一つだけじい様の話で、自分の行動もあながち間違っていなかったのかとわかった事があった。それは夏の1番暑い時間帯に山を登るという事だ。じい様曰く、暑くなる前の朝早い涼しい時間帯に山を登る人がいるが、あれはあまりおすすめしないとの事だった。低山だけを楽しむのならそれも良いが、高山を登ろうと思っている人は、あえて暑い厳しい気象条件でも耐えうる体力を付けておかなければならない、何故なら高山の気象条件はコロコロ変わる。人に優しい気象条件で山が待っている訳がない。だからどんな気象条件にもある程度耐えられる力をつけるには、あえて一日の中で1番厳しい条件下で山を登ると良い、との事だった。

 

なるほろ。夏の太陽に向かって登っていく自分をアホじゃないかと思っていたが、あながちアホっぽい行動でもないという事だな。じい様ありがとう。また今度会う時があったなら、その時はもう少しえーてぃふぃーるどを緩めて、お話聞けるようにしておきます。