若様

雪が午後から止んだので、裏山散歩に長靴を履いて行った。途中までは犬の散歩の人や子供達らしき足跡もあったけど、山に入る頃には人の足跡は無くなった。そのかわりおそらくキツネであろう足跡が2匹分くらい付いている。そういえばいつぞや見たキツネの親子は元気であろうか。この足跡がそうであれば元気な印だ。あちこちに付いている。

 

しばらく歩くと去年必ず同じ場所にメスのルリビタキがいたのだけれど今年はそこにオスのルリビタキがいるようになった。でも真っ青な青ではなく正面からだとほとんどメスに見えて背中がチラっと見えると暗い青みがかったグレーなのだ。それで若いオスだと分かった。何でもルリビタキのオスのあの綺麗な青い色は何年も経たぬとあの色にならないらしい。だとすると去年メスだと思っていた子と同じ子で、今年も同じナワバリに戻って来たのかもしれぬ。そう思うとよくぞ帰ってきてくれたと感慨深くなり、若様と名前をつけた。若様、来年は綺麗なブルーになって帰ってきてくだされ。ばあやはお待ちしております。でもばあやは、その暗いブルーグレーの羽も好きでございまする。シックでよろしいかと思います。

 

と1人乳母ごっこを脳内で繰り広げて若様を眺めていたが、とうのルリビタキ若様は、カッカッカッカッとしきりに鳴いてこっちを警戒している。これ以上若様のお邪魔をしては乳母失格。早々に退散した。

 

雪の積もった山の中は時折ササーっと雪の落ちる音がするのみで静かだ。鳥達も寒さであまり活動しないのであろうか。落ちてきた雪の粉に夕日があたって反射し恐ろしく美しい。こういう時自分が存在していて良かったと思うわけだ。この世の中に私を含めこんな美しいものを認知する存在がいなかったら、この世自体の存在がもったいない。無いに等しいではないか。

 

そうやって考えると私ももう少し人と関わって、汚いだの変な人だとでもなんなりと認識してもらわないと存在してるのにもったいないかとも思うがな。いや、この世の中の美しさを認知する存在として私は存在していると思えば、苦手な人付き合いの方面で自分を在ることにしなくても済むな。問題解決。

 

今日は若様のおかげで大変良いクリスマスイブになった。若様、お体に気をつけてお過ごしくださいな。ばあやはまた会いに来ますぜよ。