毒舌くん

仕事中に毒舌くんが私のところに来て、このやり方間違ってるがな、と言ってきた。うむ。実は私もそう思ってはいるが、そのやり方でやるように決まっているものを、金額も少ないしそのままにしておるのじゃよ、と伝えた。何とかしないといけないな。うちの課で考えてまた連絡する、とさっそうと去って行った。

 

毒舌くんはあだ名の通り毒舌なので、嫌われる人には嫌われるし、煙たがられる存在だ。毒舌という事は他人がまあ、いいよね、とうやむやにしてる事や本人が取り繕っているところをズバっと指摘すると言う事だ。私は父や妹、特に妹が苛烈な毒舌を持っているので毒舌には慣れている。むしろ毒舌の人は人をよく観察し、人が自分だけに重きを置く行為に非常に敏感で、他人のそういう部分に我慢がならず、鋭い言葉の刃物を投げかけてしまいがちなのだ。

 

それで彼が私にたまに毒舌の限りを尽くして他人の話しを聞かせに来る事がある。私はハイハイ、と笑って頷いて聞いてあげてるだけだが、内心物凄く感心している。彼が私に話しに来る人は、私も内心、おいおい、他人にそれを押し付けて平気か?おいおい、自分の仕事なんだから責任持てよ!と心の中でツッコミまくってる人ばかりなのだ。よく観察している。だから彼は敵も作りやすいが、誰もが言って欲しい事をズバッと言ってくれるだけあって一部には信頼も得やすい。私もその一部の中にいて、彼の事は嫌いになれない。

 

もちろん私にもズバッと毒舌で仕事の内容で指摘してくる事もあるが、私は言い訳はせずに現状をそのまま伝える。そうすると大体色々考えて問題を解決してくれるのだ。

 

毒舌くんが、私は人見知りだから、取引先と面会する時はいつもカチーンと固まってただ係長の横で地蔵になってると話したら、それはこの課の仕事するには向いてないんじゃないの?とズバッと言うので、うん。私もそう思う。ダメだよね。何とかやってるけど、と言うと、毒舌くん笑いながら、大丈夫そこの点は。ここに1人もこの課に向いてる奴なんていないから!と仰る。毒舌であるがその言葉は私を安心させてくれたりもする。うむ。特別私が向いてない訳ではなく、みんな向いてない人ばかりなのだ。じゃ、安心だな。

 

しかし彼には彼の為にも毒舌を吐く相手を是非私くらいにして、もう少し他人には丸くなって欲しいものよ。