とんだ4D

妹とパラサイトという映画を観に行った。話題の映画であるからそこそこ人が入っている。始まりそうなギリギリの時、太った男の人が頭にスッポリフードを被りノシノシと館内に入って来た。見るからに何かこう、情報量の多そうな人だ。聴覚や嗅覚に訴えかけてきそうな人。大体入ってくる人に目が行く事などないのに、目が行ってしまう時点で視覚的にもかなり訴えかけてくるものがある。世間ではこれをやべえヤツというのだろうか。

 

映画に集中したいので、映画以外の余分な情報に気を取られたくない。こちらの座席にずんずん向かってくるが、頼む、後ろの座席であってくれ、と祈り虚しく空席3つを挟み私の4つ隣にずぅんんとお座りになられた。まあ、仕方がない。どうやらポップコーンの類いを持っていないから、聴覚的には訴えて来ないタイプの人だ。つまりパリポリパリポリうるさくなさそう。

 

しかし映画が始まってすぐに異変に気が付く。く、臭い。隣の妹も気がついている。く、臭い。すっぱい。チラッとみると4つ隣に座られたそのお方が靴を脱ぎ、4本指ソックスに包まれたおみ足を膝の上で組んで上に上げている。貴方様の足の臭いでありましたか。良かった。理由が分かって…てなもんじゃない。臭いって!!靴を履いてくれ。

 

映画はニオイが臭い事がかなり重要に表現されている。その気持ちが良くわかる。映画の登場人物が、臭さに顔を歪め窓を開けるシーン、思わず顔を背けるシーン、臭い人にたいする侮蔑のこもったセリフ…どうしよう。妹も私もその状況の中にいるようだ。臨場感が溢れ過ぎている。主に4つ隣のその人の4本指ソックスの間から溢れている。

 

映画が終わり帰路に向かっている途中、人も少なくなった所で、妹と涙が出る程ゲラゲラ笑った。とんだ4Dだ。映画のシーンに合わせてめちゃくちゃ嗅覚に訴えかけてきた。私達だけの周囲限定で臨場感溢れるサービスを与えてくれたあの人には感謝しなければならないだろうか。2Dの値段で4D相当のサービスしてくれたからな。