仙人イトウの輝き

久しぶりに裏山へ行った。何故に久しぶりかというと会社から帰ってきた貴重な時間、ジョギングか裏山散歩兼ねた鳥見に費やすかの天秤で、最近はマラソン大会10kmのその内走るんだい!って気がモリモリで、ジョギングばかりしていた。

 

そのせいで今年は旅立つ前のジョウビタキの見納めも出来なかったし、渡りの途中にこの小さな裏山にもオオルリが寄ってくれるのであるが、それも今年は逃してしまったようだ。オオルリに会いに行くにはもう少し山深い奥地に行くしかあるまい。GWは鳥見と登山に励もう。

 

鳥には会えなかったが、久しぶりに裏山整備おじさん、仙人イトウに出会えた。こんにちは、と挨拶したら、ニュースでキャンプ中の人が倒木で亡くなったのを見ていても立ってもいられなくなった、今にも落ちてきそうな腐った木があるからそこは散策の人が通らないよう迂回道を作っておいた、という趣旨の話を相変わらず早口で立派にお鼻を垂らしてお話下さる。

 

それでしみじみと、ああ、私やっぱりこういう人好きだな〜と垂れたままの鼻水から目を離さず思う。倒木のニュースは知っていて、残された家族や29歳でさぞ無念だろうと思って胸がキュッとなるけど、私は所詮そこまでの人間である。仙人イトウのように、増えたと言っても休日に10人ハイキングに来るかどうかのこの小山に、それでも来る人の危険を思うといても立ってもいられず腐った木を伐採に来るその心の輝きと鼻水の輝きが相まってこちらの目が潰れそうだ。

 

最近仕事がどうにも落ち着かず、就業時間があっという間に過ぎ、ええ?もう定時?!ってな日々で、じゃあ残業していくか?となるとそれは御免!っと私の中の侍が、刀を振るって残った仕事の糸をスパッと切ってくれる。だから気持ちよく完璧に仕事をこなしたお気持ちでサッと会社を後にする。

 

しかし日中の忙しさのせいか最近の天候の悪さか知らぬが、頻繁に立ちくらみを起こすので、血圧を測ってみたら、えらく低いではないか。血圧いつも低めなのだが、それよりさらに低い。しかし理由が分かったのでスッキリした。理由が分かったので、立ちくらみの度に、昔の漫画に出てくる病弱なヒロインを脳内で演じて、イケメンが肩を支えてくれて恋が芽生える妄想なんかしちゃってる。実際に自分を支えてくれるのは、固くて白い無口な王子様、またの名を壁、という存在であるがな。ヨタヨタ壁を頼りに歩く姿は病弱な薄幸のヒロインではなく、発酵しすぎた、ただのくたびれたおばさんであるがな。

 

今日はそれにしても良い日であった。良い人に会うと嬉しい。くたびれた心に今日は仙人イトウよ、輝きをありがとう。