大人達の遊び場

11時間の登山をしようと意気込んでいたら意気込み過ぎて夜眠れず、夜中2時の出立までに3時間も眠れなかった。今日は物凄く日差しもあるし、初めて11時間歩くのだ、寝不足は危険である。熱中症になるかもしれないし、なにより人気のないコースをわざわざ選ぶので何かあっても助けを呼べる可能性は低い。という事でさっさっと諦めて2度寝する。

 

目が覚めてからキビタキ様を観に裏山に行く。裏山の入口で、常連の仙人イトウでも教授でもない車が数台泊まっている。ほうほう。しかしこの車は昨年何度か見かけたことがある。多分蜂採りおじさん達だ。案の定山道には竹先に目印とイカをつけた棒が等間隔で刺してあり、蜂をおびき寄せているようだ。

 

しばらく歩いて池のほとりにつくと、新顔のおじさまが網を持って頭上の木をしきりに気にしている。何かいますか?と声をかけるとクワガタがいる、という。上を見るとなるほど立派なミヤマクワガタがいる。おじさまがクワガタを上手に網で捕まえたので、見せてもらうと大きな立派なクワガタだ。おじさまが、これはまだ地上に出てきたばかりのクワガタだね、と仰る。どうしてですか?と聞くとクワガタのこの茶色いうぶ毛みたいのあるでしょ、これは地上で過ごすうちにだんだん取れて無くなってしまうけど、これはまだこんなについてるでしょ。だから出てきたばかり、と教えてくれる。そのトレビアにへえ〜っと驚きを隠せず、めちゃくちゃ大きい感嘆の声をあげてしまった。最後に立派なツノにちょんちょんと触らせてもらって、立派に大きくなったね、と思わず話しかけてしまい、ハッ!として急に恥ずかしくなる。1人の時は平気で虫に話しかけているので、そのクセがでてしまった。あまり虫採りの邪魔をしてもなんなので、ちまたで騒がれているソロキャンパーに話しかけるウザイ人とおなじく、虫採りを楽しむ人に絡むウザイ人になっては大変、ということで、恥ずかし紛れに、お邪魔しました、とその場を去る。

 

しばらく歩くと蜂採りおじさんに出会う。オオスズメバチですか?キイロスズメバチですか?と聞くと、いや、小さいクロスズメバチを採る。と仰る。巣ごと家に持って帰って育てて、今は手のひらくらいの巣でも11月くらいにはこんなに大きくなる、と両手を輪にして教えてくださる。

 

でも、まだあまりイカに寄ってきて無いですね、と言うと、いや、さっきまで来ていた。今蜂を採る道具を仲間が取りに行ってるから。また3分くらいしたら、蜂も戻ってくるからその時に目印を付けて追いかける。と仰る。大変ですね。巣見つかりますか?と聞くと直ぐにみつかる、と自信満々である。プロだな、こりゃ。おなじく蜂を採る人に絡むウザイ人になってはいけないので、またもやお邪魔しました、と会釈をしてその場を去る。

 

その他にも今日はエサを運ぶキビタキを見れたし、土に穴が空いてるから、こりゃ蝉の蛹が出てきた穴だなと中を覗いたら、蝉の蛹がこちらを見ている。ほげ。まだご在宅であらせられましたか。蝉の穴を覗く時蝉もまたこちらを覗いているのだ、って感じだな。ツンツン棒でつつくと、激おこして前足をカッと持ち上げる。あまりしつこくツンツンしていたら、穴の奥に隠れてしまい、それでも飽き足らずスマホのライトで穴を覗き見て、隠れている蝉の蛹をニッコリ眺めるという、蝉からしたらかなりホラーな行動をしてしまう。さっきまであんなに1人時間を楽しんでいる人の邪魔にならないように謙虚に慎ましくしていたのに、相手が蝉となった途端にこの執拗さ。いけない。蝉に悪い事をした。これからひと脱ぎして大人にならなきゃならない大事な時にしつこく絡む人間にあって災難である。穴に向かってすまぬ、と謝ってその場を去った。

 

1人時間て大切だし、大人になってもめいめい楽しく趣味に勤しんで遊んでいる人たちを見るとほっこりする。今日のあのおじさま達もそれぞれ蜂をとったりクワガタを採れて満足して帰ったであろう。いい大人が子供とおなじように遊ぶ姿は尊いものだな。

 


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