三叉路を通ってやって来たあなた

ニキビが出来た。ハタチを過ぎたらそれはニキビではなく吹き出物だと言われるかもしれないが、私は永遠の20才なので、やはりニキビと呼ばせて頂こう。

 

私はこのニキビが出来ると早々に、炎症の原因の中身をぶちまけようとこれみよがしにいじってしまうので、中身はぶちまけても、その後が赤く残ってしまう。それはお肌に幾分悪いのだと、会社の同僚のチューさんが教えてくれたので、今回は大人しく薬を塗って、そっとしておいたのだ。

 

ところが全然良くならないどころか、いつもより腫れる。しまいには何かどんどん広がるし水泡まで出来ている。うむ。やはり人の言うことは信じられぬ。早々に悪い物を出してあげた方が良かったのだ、私の方が正しかった、と1人鏡の前でドヤ顔をしたはいいが、しかしこれは治る気配がない。

 

そういう事で、皮膚科にニキビが酷くて治らない、と診察してもらいに行くと、あ、これはニキビじゃなくてヘルペスですね。口唇ヘルペス。体力が落ちていたり、ストレスがあったりすると、免疫力が落ちて、ほら、顔の耳の下から、顔全体に三方向に広がっている、三叉神経を通ってウィルスが活動するんです、とお医者さまが言う。

 

思わず、へぇ〜!!と感嘆の声を出す。ウィルスがはるばる三叉路をてくてく歩いてたどり着いここはどこかと顔を出して繁殖しまくった結果かい、このヘルペスは。ようこそようこそ、こんにちわ。しかし、君らには大人しく静かに騒がず、三叉神経の奥深くで、グーグー寝てて頂きたい。

 

という事で抗ウイルス薬の飲み薬と塗り薬を貰って、飲むは塗るはをたった1日行っただけで、グチュグチュしていたところがあっという間にかさぶたになってきた。どうやらウィルスさん達はグーグーまた寝に入ってくれたらしい。

 

早くコロナウイルスもグーグー寝てくれないかな。一体あのウィルスさんはどんな動物の中でグーグーしてたのか分からないけど、パッチリお目目を覚ましてパーティー開きすぎだっっ。それに比べたら三叉路の袋小路からやって来たお客さまなど、ほんまに可愛いものよ。