物になる。

会社の健康診断をやった。胃部X線バリウム。あれを初めて飲んだ時はどんな地獄かと思った。よくあれを吐き出させずに飲めるものだとおもってるよな、考えた人。と思ったくらいだ。何度もオエッオエッとなってやっと飲み干した恐ろしい経験から、その後数年はその検査は受けないようにしていた。

 

しかし去年からやはり私もバリウム検査ごときで死ぬような気持ちになっていたら、これから色んな病気になるつもりはないが、つもりが外れてなることも想定してあんな検査やこんな検査やそんな事まで検査に慣れておかなくては、と思い立ちまた受け始めたのだ。

 

そこで編み出した方法。それは心頭滅却方法。これがマジで幸を奏した。バリウムを飲み始める瞬間に、意識を1点に集中させ、心の中で心頭滅却心頭滅却心頭滅却と唱え、私はここにいない意識は、そう、今日はあのドアのネジになったつもりでゴクゴク飲み干すのだ。これをやるようになったら1度もオエッとならずに飲めるようになった。

 

ただこれには物凄い集中力がいるし、必死に今日はドアのネジになった気でドアのネジを凝視しながら飲むので、傍から見たら結構目がイッチャッテルかもしれない。ちょっとでも現実の意識、バリウムの感触に意識が戻ろうものならあっという間にオエッとなる事が分かるので、意識が現実の自分感覚に戻らないよう、必死にネジに意識をしがみつかせるのだ。

 

ありがとう、検査室のドアのネジ。今回は君のおかげでオエッとならずに済んだ。去年はティッシュ箱に意識を飛ばした。人は物になれる。人は物扱いされたら嫌かもしれないが、進んで物になる利点もある。

 

とりあえず今回の健康診断は、医師の診察時に、じっくり心音を聞かれて、心音異常、と診察結果を走りがきされた後に、なんのコメントもなく、はい、次はレントゲン行ってください、と告げられのだが、おいおい、その心音異常っつーのがめちゃくちゃ気になるだろうよ!!何なんですか?何なんですか?!先生!その心音異常とやらは?!!と脳内で突っ込むだけで、あ、はい、ありがとうございました、と静かにその場を去るしかできない小心者。

 

今年の結果は絶対要検査とかそういう類のがくるのだろうなあ。健康診断って結果が来るまで精神衛生上良くないような気がするから、それだけで健康を害しそうだ。