古墳が落ちすぎ

日本最古と言われる前方後円墳に会いに行く事にしたが、その盆地を眺められる山も登りましょ、ついでに鳥も見れるといいな、と首にいつも通りデカくて古い双眼鏡を下げて、趣味を時間内に余すこと無く楽しみたいという欲望ギラギラに車を走らせはるばる我が圏内を超え関西圏までやってきた。でもちょっと意味わかんないなと思うのは、北アルプスに登る時、県を跨らずただ我が県を北上するだけなのにたどり着くのに3時間近くかかるのだが、この古墳の王国までは2時間半で来れることだ。 

 

我が県途中で道が魔境に入ってて距離がバグるようになっているのかもしれない。

 

山の頂上につくと、なるほど格別のながめである。今日は少しボヤけているが空気が澄んでいると明石海峡大橋もくっきり見えるらしい。万葉集に出てくるお馴染みの山、耳成山畝傍山と天香具山も見えてその位置関係もハッキリわかる。昔の人が山の三角関係を想像したのもなるほどよく分かる位置関係である。大体物理的位置がもう三角だしな。あと、もう既に山の裾野に目で見てわかる前方後円墳などの古墳がゴロゴロ落ちてる。もう落ちてるって表現がピッタリ。なんだここは。天国か。古墳熱が冷めやらぬので古墳の多さに鼻血が出そうである。

 

下山は山中にある古墳群を見ようと登りの時と別の道から下山する。てっきり看板か何か立てかけてあるのかと思ったら、いきなり不自然な小山がもりもりあちこちに出てきて、え?まさか?この無造作に放置されたものが??と駆け寄ってみると、しっかり立派な石室をたたえた古墳達なのである。うっそー!!当時の石室がこんなにいっぱい見れるなんてー!大興奮である。石室の大きさ大体奥行3mほど、縦は1mから2mのものもあるであろうか。天井石が崩れ落ちて上から石室を眺められるもの、横穴の入口が崩れ落ちているものもあるが、石組の保存状態は総じて良い。なんなんだここは。我が県だったら少なくとも看板くらいは立てるであろう級の古墳群もここでは、田舎の太陽光パネルやパチンコ屋くらいのありふれた景色であるらしい。

 

横穴式石室のある円墳という事で、覚えたばかりの知識、これは6世紀半ばから7世紀末くらいの古墳だな、と判断する。古墳にコーフンする前はこのような円墳が前方後円墳のような巨大な古墳になったかと思ったら反対で、前方後円墳が古い時代で、円墳の方が古墳時代半ば以降作られたようだ。

 

横穴になったのも竪穴で被葬者入れて終わりよりさ、横穴にして出入りできるようにして、また被葬者いれてこうぜい、いえぃいえぃ、っていう意味もあったらしく、古代の持続可能な社会SDGsPDCAサイクル、提案活動的、な方向転換であったのだろうか。

 

古墳群に興奮しきったところで下山するとすぐに巨大な前方後円墳が左に、右には双方中円墳にお迎えされる。比喩ではなく、あ、あ、どっち?どっちを先に見ればいいの?とどちらも早く行きたすぎて道を左右行ったり来たりしてしまう。とりあえず若干斜面の上側である、双方中円墳を見に行く。ここは江戸時代には古墳の上で藩が矢の練習もしてたらしく、墳丘は一部削られてもいるようだ。それでも歩いていて分かる方、円、ちょっといびつな方、って分かって、本当に双方中円墳だ、と実感できた。

 

とりあえず、とりあえず、と下山した裾野の古墳群を見ていたらすっかり時間が過ぎてしまい、結局最古の前方後円墳を見に行く時間が無くなってしまった。そのかわり、資料館で資料見てたら、トレイルランの人が入ってきて、マンホールカードくださーい、ってマンホールカード貰っていたので、それなら私も、と貰った人生初のマンホールカードが、なんと三角縁神獣鏡のマンホールカードであった。最高。大事にする。あと、観光行った先でマンホールカードもらえる時は貰っておこう、と1つ賢くなっておいた。

 

その小さな資料館でそんな時間潰す事ある?ってくらい時間を溶かす。私の後に3人くらい入ってきていたがその人達はあっという間に居なくなって、館内に私と係員のおじいちゃんと2人きりなのを良いことに、私はガラスのショーケースに物理的にへばりついて神獣鏡の名前当てクイズを自分一人でして楽しだ。おじいちゃん係員が、私が帰る時にニッコリ笑って、見れましたか、と聞いてきたので、元気よくはい!見れました!と答えておいた。

 

古墳の王国。舐めてたわ。こんなに古墳が落ちてるなんて。ここにはまだまだ通わなくてはならぬな。こんな満足出来る体験できて、古墳拝観料も存在しない、資料館入場料金も無料、ってどういうこと。お金出させてよ、と推しに貢ぎたい気持ちが高ぶったので、市内でいっぱいお土産買っておいた。資料館に入ってきたトレイルランナーが、ここは無料ですか?と聞いて安心して展示をみていたが、ばかやろう、こんな素敵な場所、お金出し価値ありすぎだろう、ビンタするぞ。まあ、無料だからお金だせないんだけどさ。

 

満足して帰路に。また来よう。古墳ほど分かりやすいタイムカプセルがあるだろうか。各地のタイムカプセルに会いにいくぞ。