あんた怖くないかね

この前4ヶ月ぶりくらいに登山をした。冬の時期は雪のない里山くらいしか登れないので、でも3時間くらいは山をウロウロしたいなという事で比較的近くの里山をダラダラ縦走したのだ。山城の跡があったり、古い見事なお寺もあったり、小さな滝や、氷柱が美しく垂れた岩など見応え充分な上に鳥にも沢山出会えて満足した。

 

山城では井戸の跡もあり、看板に伝説が書いてある。城が攻め落とされる時に城の主が金の鶏をエイヤ!と井戸に隠し、その鶏が今でも正月になると井戸から出てきコケコッコーと主人を待って鳴くというではないか。切ない。今でも主人を待ってるなんて忠犬ハチ公ならぬ忠鳥ニワ公ではないか。んでもなんだな、この手の伝説別の山城に行った時にも看板に書いてあったような気がする。そうするとあれかな?金の鶏も派遣的お仕事なのであろうか。あちこちの山城に派遣される金の鳥。お仕事ご苦労さまです。

 

3ヶ月も登山していなかったので、登山しようがしまいが何も変わらないなと思っていたのに山に入って何時間も歩いていると、何かすごく普段と違う感覚に襲われる。うまく言葉に出来ないが、山に引き込まれる、って怖い言葉があるけどそれに近い。何かにスイッチが入る感覚があってそれがとても心地よい。何かに繋がってそこからエネルギーをもらってるような感覚。

 

それでやっぱり里山でもいいから私には自然と触れ合う時間が必要なのだな、って事で毎週どっか山に行こう、とあらためて思ったのだ。

 

それで先週は時間も無かったので家の裏山を登り、前から気にはなっていたけど一度も通った事の無い道の方に行ってみたら、延々と歩いた後、おじさんが木を切っている旅館跡みたいな所に出てしまった。おじさんはめちゃくちゃ奇異なものでも見るように私を見るので、怪しいものでは無いとアピールするために、こんにちわ、と挨拶した。まあ、めちゃくちゃ怪しいヤツに見えるよね。なんてたってどう見ても正規の登山ルートがある訳でも無し、獣道に毛が生えた程度の道をデカイ女が1人で木の棒を手に出てきたら山の妖怪と間違われても仕方がない。

 

あんた、どこから来た?と聞かれたので、あっちの団地の方からです。と応える。へえ、この山はずっと続いているのか?あんた1人で来たの?山に動物でない?と聞かれたので、キター!!動物の事聞いてくれた!と思って嬉々として、ええ!います!この山イノシシ、キツネ、シカ、タヌキ、何でもいて、会った事あります!と言ったら、あんた怖くないかね?女の人1人で歩いているんでしょ?と言うので、はい。いつも1人ですけど山が大好きなので、と言ったら、そうかあ、凄いなあ、と最後まで珍しいものを見るような目で私を見ておった。

 

そんなに珍しいか?と思ったがどう考えても私も私以外の女人がブラブラそこら辺の山を木の棒を持って探検している所を見たことがない。男の人はまあまあいるのだけど。バケツ持ったり網持ったりノコギリ持ったりして山ウロウロして明らかに登山では無く探検している人が。しかしそこに女人の存在を確認した事がない。登山している女人はいっぱいいる。だけど探検している女人は見た事ない。

 

今日は物珍しいものを見る目をはっきりと自分に向けられて新鮮な気持ちだ。一期一会。あのおっちゃんの中に、山の麓で出会った変人として私は存在できる。しかしなあ、探検は子供の頃からめちゃくちゃ楽しくて今でも楽しいって言うのは大人になりきれてなくてもしかして恥ずかしい事なのか?あんまり他人に趣味として話すのはやめておこう。また新鮮な気持ちになってしまう。