課長となったといえど部下は1人のみ、あとは派遣さん達である。部下は色々さっさっと仕事をこなしてくれてありがたやー。部下と上司というより、女性管理職を今の5倍にしたいというメスならネコでも管理職に据えようとする会社の地引き網にまんまと引っかかって陸に水揚げされた魚を可哀想にと哀れんで助けてくれる浦島太郎と魚の関係である。
その浦島太郎、登山が趣味なので色々登山の話で盛り上がれる。私がまだ登っていない劔岳も登ったりしちゃって、でもその割には絶対テント泊なんて重くてやりたくないですね、とあくまで登山エンジョイ勢である。辛ければ辛いほど燃え上がる根性のみで登る昭和な登山スタイルの私と明らかに方向性が違うのである。体力も技術も無いのに根性だけで先週も穂高岳に登ったので1週間経とうとするのに筋肉がやられて曲がるという動きが制限され、ロボットのような動きしかできない。いや、今どきのロボットは関節するするするなので、むしろロボット以下の動きしかできぬ。
それで、登山の話で私は今年テント泊デビューするのじゃよ、しかし雷が怖くてね、という話をしていたら、浦島太郎の君、僕雷が下から上に上がってくるような中を稜線歩いたことあるし、なんなら噴火経験してるんで雷はそこまで怖くないですね、とサラッと聞き逃せないことをのたまう。はっ?噴火?噴火ってあの御嶽山の噴火の時のこと?!と聞くと、そうですね、僕あの時丁度9合目以上にいました。と飄々と言うではないか!
いやいや、待て待て、よく生きてたな!と言うと凄かったですよ、ドーン!!と噴火したと思ったら噴煙が来るから急いで山を駆け下りて近くの避難小屋に入ったはいいけどめちゃくちゃ熱い黒い噴煙が入ってきて、服で肌や口を覆って、それでもむちゃくちゃ熱くて、避難小屋の屋根にはバンバン噴石があたるし、とうの避難小屋は掃除道具入れ大きくしただけみたいな小屋だったから、友達と、もうここでじっとしてて死ぬくらいなら思いっきって駆け下りよう、って言って噴石落ちてくるなか小屋を飛び出して山を駆け下りたんですよ、と話してくれた。
その情景が浮かんで、聞いてるだけなのにこちらは汗がダラダラ出て震えてしまった。
だから僕は基本的に火山は登れないですね。焼岳とか、御嶽山も。まあ最近はもう10年も経つし解禁してもいいかな、とは思いますけどその当時は数ヶ月は噴火に合う夢を見てうなされてましたからね、とのたまいたまふ。
そりゃそうやろなあ。あの噴火は水蒸気爆発で噴火の程度はそこまでではなかったのに死者が多く出た。まだ見つかっていない人もいる。
御嶽山を見ると自然と手を合わせてしまう。美しいのもそうだが沢山の人の冥福を祈らずにはいられない。
浦島太郎くんに、九死に一生だったね。その経験してればよっぽどの事にビビれないね、というと、そうなんですよ、といつも通り飄々として笑いおったわ。